Radeon RX 6900XTの低電圧設定とオーバークロック設定


2020/12/19

AMDのハイエンドGPU「Radeon RX 6900XT」のリファレンスモデルを購入しました。
発売当日の抽選では全て外れてしまいましたが、翌日秋葉の店舗に置いてあるとの情報があったため、急いで向かったところ購入することができました。 各メディアやYoutubeでベンチ結果を公表していますが、私の環境でどのくらいのスコア・FPSが出るかを調べ、OC設定と低電圧設定で各種ベンチを回してみました。
※当ページはSAMの設定を有効にした状態で検証しています。4Kは仮想超高解像度(VSR)を使用して検証。
※低電圧化・OCは故障の原因の上、メーカーの保証対象外なので自己責任です。

検証環境について

検証するPCの構成は以下の通りです。
モニターはHDRに対応していないため、計測結果は設定値OFFの状態になります。
ワットチェッカーでシステム全体の電力を測るので、構成をすべて載せています。

構成
CPU Ryzen 9 5950X (PBO + CO設定)
CPUクーラー Noctua NH-D15
マザーボード ASUS ROG CROSSHAIR VIII HERO(WI-FI) BIOS ver.3003
メモリ CORSAIR VENGEANCE LPX 32GB(2 x 16GB、3600 CL16)
グラボ Radeon RX 6900XT SAM有効
ストレージ SSD 256GB(OS起動用)、SSD M.2 ×2(WD SN850、SN750)、HDD ×2(2TB、1TB)
サウンドカード Sound Blaster AE-9
電源 Seasonic PRIME Ultra Titanium SSR-850TR
OS Windows10 Pro 2009(20H2)
ケース Cooler Master MasterCase H500M(20cm 吸気ファン×2、負圧)
その他 LEDテープ×3、LEDファンフレーム×4、14㎝ファン×1、12cmファン×4
ドライバ Adrenalin 2020 Edition 20.12.1 Optional
モニター EIZO FS2735 2560×1440 144Hz
部屋の温度 20℃の環境で計測

6900XTの電圧設定(低電圧設定の検証)

まず最初に、電圧を調整することで3D Markのスコアが向上するのかを検証します。Vega64やRadeonⅦの時もそうでしたが、Radeonのグラボは電圧の初期値が高めに設定されていました。 パワーリミットを上げて電圧を極力さげることで高クロックが出やすくなり、スコア・フレームレートが向上してたので、今回の6900XTも同じなのか検証してみました。

私の6900XTの電圧・クロック設定値の確認をします。Radeonのドライバーソフトからチューニングを開いて「手動」に変更したときの値ですが、「最大周波数:2509MHz、電圧:1175mv」で設定されていました。 パワーリミットを最大の15%にした状態で電圧を変更して3DMARKの「Time Spy Extreme」のスコアを計りました。

設定パターン 電圧設定値 スコア(Time Spy Extreme:グラフィックスコア)
デフォルト 1175mv Graphics:8758、GPTest1 58.61 FPS、GPTest2 49.08 FPS
パターン1(PL+15%のみ変更) 1175mv Graphics:9095、GPTest1 61.20 FPS、GPTest2 50.75 FPS
パターン2 1130mv Graphics:9216、GPTest1 61.93 FPS、GPTest2 51.48 FPS
パターン3 1100mv Graphics:9300、GPTest1 62.37 FPS、GPTest2 52.03 FPS
パターン4 1075mv Graphics:9307、GPTest1 62.26 FPS、GPTest2 52.18 FPS

上記表のデフォルト設定は、自動ではなく「手動」に変更した状態です。パターン2以降はパワーリミットを最大の15%に設定した状態で電圧を変更してます。結果ですが、スコアを見ると電圧を下げた方がGPUクロックをキープできるため、 スコアとフレームが上がりました。(2400MHz~2480MHzをキープ)
初期設定から100mvを下げた状態でいろいろなゲームで遊んでも問題がなく、3DMarkのストレステストをクリアしたので、今回も高めに電圧が設定されているようです。

誤差の範囲内ですが、スコアが高い1075mvの設定を低電圧設定パターンとして、ゲームのフレームレート等を計測していきます。

オーバークロック設定

※メモリのOCは特に壊れやすいので自己責任です。

シャドウオブザトゥームレイダーで設定を全て最高(レイトレも含む)にしてアンチエイリアスを高負荷の「SMAA4x」にして、とある場所に行くと高フレームを維持できるのでゲームがクラッシュしない範囲で値を調整しました。(2730MHzあたりが続くとゲームがクラッシュ)
メモリ周波数を「2112MHz」にし、GPU周波数を「2709MHz」に設定しました。下記の画像では、電圧を1100mvの状態に設定していますが、2510MHzを超えると設定値を無視して1100mV以上の値になります。(ドライバーか仕様か不明)
なので、2600MHzが出るときには電圧が最大値の1175mvに勝手になってしまいます。2510MHzを下回る時は設定した電圧値以下になるようになるので、設定値が効いていないわけではないようです。


実際のGPUクロック数ですが、ジャンクション温度が低ければ設定した高クロック数が出るようです。トゥームレイダーでGPUクロックとジャンクション温度の関係を録画してみました。
ジャンクション温度が57℃~85℃の間は2719MHz~2590MHzをキープし、86℃~100℃は2621MHz~2551Mhをキープ、101℃~112℃では 2550MHz~2448MHzをキープします。ファンの速度を速めてもPCケース内の熱を放出しない限りジャンクション温度が下がらないため、PCケース内にGPUの熱が籠もったままだと徐々に温度が高くなります。直ぐには温度が上昇するわけではないのですが、高クロックを設定しても2500MHz台になってしまうので、 GPUクロックよりメモリクロックを上げた方が効果的だと思います。
この設定をOC設定としてゲームのフレームレート等を計測していきます。

追記
検証後にわかったのですが、ジャンクション温度が90度越えとなってしまうのは2600Mhz以上で電圧が最大値である1175mvの状態が続いてしまい、その熱がPCケースに籠もってしまうことが原因でした。 試しに最大周波数を「2589Mhz」に下げたところ、電圧が1150mvくらいになりジャンクション温度を80度をキープし続けることができました。(81度以上は超えないようになりました。)
そのため、2700Mhzを設定するよりも2599Mhzあたりに押さえて設定した方が平均フレームレートを稼ぐことができるため、 一番効率が良い状態になります。
最大周波数を高く設定してもスコアがあまり伸びない人はジャンクション温度が90度越えになっているかもしれないので、少し下げた方が良いかもしれません。

ゲームの計測結果(WQHD)

手持ちのソフトで検証になりますが、WQHD画質でどのくらいでるのかを計りました。計測はベンチマークがゲーム内にあれば実行し、なければ「CapFrameX」で計測しています。
計測パターンですが、ドライバーの設定値を「レイジモード」「低電圧設定」「OC」で計測します。

GTAⅤの結果

設定はすべて最大、FXAAオン、MSAA×8でベンチマークを実行。結果はベンチマークのPass4(ハリアーから車に乗る様子)の結果を記載しています。
最大・最小を見る限り誤差の範囲かと思うので平均を見て下さい。低電圧設定とOC設定では対した差は無いですが、レイジモードと比べると4フレームほど出る結果となりました。

計測パターン スコア・フレーム数
レイジモード 最高:164.20 最小:46.4 平均:89.5
低電圧設定 最高:166.0 最小:45.5 平均:93.2
OC設定 最高:187.2  最小:43.3 平均:93.8

FF14ベンチの結果

設定は最高設定、フルスクリーンモードで計測。
レイジモードと低電圧設定のスコアは僅差ですが、平均フレームレートが3フレームほど違う結果になりました。

計測パターン スコア・フレーム数
レイジモード スコア:24384 最小:70  平均:169.4901
低電圧設定 スコア:24707 最小:72  平均:172.8128
OC設定 スコア:24917 最小:71  平均:174.7641

FarCry5 New Dawnの結果

最高設定のアンチエイリアスTAAで計測。
レイジモード・低電圧設定共にほぼ誤差レベルです。OC設定の結果は他の2つより最高フレームレートが低い結果となりましたが、平均フレームに2フレームほど差がでました。

計測パターン スコア・フレーム数
レイジモード 最高:195 最小:82 平均:117
低電圧設定 最高:194 最小:82 平均:117
OC設定 最高:192 最小:84 平均:119

サイバーパンク2077の結果

このゲームは、CapFrameXを立ち上げてると上手く起動しなかったので、Radeonドライバーで取得できるログで計測しました。
Radeonでは現状レイトレーシングは非対応なので、レイトレーシングオフ・プリセット最高で計測しました。
レイジモードと比べると低電圧・OCの方が3フレーム以上でる結果となりました。サイバーパンクの最高設定で80フレームでるなら十分楽しめそうですね。

計測パターン スコア・フレーム数
レイジモード 最高:99.0 最小:86.0 平均:92.8
低電圧設定 最高:102.0 最小:87.0 平均:95.6
OC設定 最高:103.0 最小:89.0 平均:97.12

MHW:IBの結果

全項目最大の値に設定し、HDRを64bit、アンチエイリアスTAA、High Resolution Texture PackのDX12設定で計測しました。
計測した場所ですが、渡りの凍て地のマップ7番キャンプ→15番キャンプへ移動した時に計測しています。結果ですが、最小・平均は低電圧設定の方が上になりました。
OC設定だと高クロックが出たせいでジャンクション温度が上がったため、クロックが低下してしまったので低電圧設定より下になる結果となりました。

計測パターン スコア・フレーム数
レイジモード 最高:117.6 最小:92.1 平均:111.2
低電圧設定 最高:120.2 最小:92.7 平均:112.9
OC設定 最高:120.9 最小:91.6 平均:112.7

CONTROLの結果

レイトレーシング対応ゲームのため、プリセット高、レイトレーシング高で計測しました。
最高フレームが60を切っているので、Radeonでレイトレ(高設定)は厳しいです。他のゲームではOC設定と低電圧設定に差があまりありませんでしたが、 レイトレのように高負荷時だとメモリのOCとGPUクロックのOCが効くようなので、他の計測結果とは違いOC設定の方がフレームが多く出る結果となりました。

計測パターン スコア・フレーム数
レイジモード 最高:54.5 最小:42.1 平均:49.2
低電圧設定 最高:56.4 最小:43.2 平均:50.8
OC設定 最高:59.6 最小:47.4 平均:52.7

ゲームの計測結果(4K)

ディスプレイがWQHDのため、Radeonの仮想超高解像度を使用して4Kが画質で測ってみました。

仮想解像度なので、実際と若干異なるかもしれません。FF14の4KベンチとサイバーパンクのフレームレートをOC設定で計測しました。
サイバーパンクはプリセット中でも60フレームを切ってしまいます。(競合のグラボと比べると5~10フレームも下)
現在開発中との噂のFidelityFX Super Resolution(DLSS相当の昨日)が対応すればサイバーパンクも4Kで遊べそうですね。

ソフト名 スコア・フレーム数
FF14ベンチ スコア:15100 最小:39  平均:100.1356
サイバーパンク2077(プリセット低) 最高:102.0 最小:76.0 平均:82.5
サイバーパンク2077(プリセット中) 最高:60.0 最小:50.0 平均:55.5
サイバーパンク2077(プリセット高) 最高:46.0 最小:37.0 平均:42.4
サイバーパンク2077(プリセット最高) 最高:42.0 最小:35.0 平均:39.0

システム全体の消費電力

ゲームプレイ時のシステムの全体消費電力を、サンワのワットチェッカーで測ってみました。結果ですが、システム全体で548W、GPU単体は計測ソフト上だと293Wでした。競合製品よりかは省エネです。
ちなみにアイドル時のシステムの全体消費電力は140W、GPU単体は計測ソフト上だと16wです。

その他・所感など

内排気のグラボですがディスプレイ出力端子の場所から排気するようなつくりではないため、全ての熱をケース内に放出します。なので排気が不十分な狭いケースは、排気ファンの回転を上げて強めないと周りのPCパーツの温度が高くなってしまいます。
私が使用してるケースは大きめのケースでノクチュアの12Cmと14Cmファンを排気に使用していますが、それでもケース内はかなり暖かくなりました。 排気を強めにしてる構成でこれだけ熱が籠もるのなら、排気が不十分なケースは少し厳しいと個人的に思いました。

一番気になるのは、M.2のSSDです。GPUの裏側にGen4対応のSN850を使用していますが、SSDにアクセスしていない状態でゲームをするとアイドル時+18の50℃になりました。ゲーム中この温度にずっとなるので、SSDの寿命に少し関わるかなぁという感じでしょうか。

そのほかですが、コイル鳴きが少し気になります(私だけではなく報告がそこそこあり)。日常で使う時はコイル鳴きが発生しませんが、モンハンなどの高負荷のゲームをやっていると少しコイルの音が聞こえます。ケースファンの音でかき消されるか程の小さい音ですが、静音化してる人はストレスになりますね。 その代わりファンの音はとても静かでよく冷えます。セミレスファンモードも搭載しているので、アイドル時はとても静かです。
今回のリファレンスはSAPPHIREが製造している話も海外であるので、リファレンスモデルとしては良くできる製品だと思います。

まとめ

以上で6900XTの低電圧設定・OC設定と簡単なレビューになります。値段は高めですがWQHD画質で遊ぶなら満足できるグラボです。

  • WQHD画質であれば、100フレーム以上はキープできる性能
  • レイトレはゲームによっては厳しい(これからのドライバに期待)
  • サイバーパンクなど、負荷が高めでなければ4K画質でも60FPSはキープ可能
  • 電圧が若干高めに設定されているので、低電圧化も可能
  • 電圧を下げた方がベンチのスコアは向上する
  • ジャンクション温度が高くなる(90℃くらい)とクロックが落ちる
  • GPUクロックは少し上げる程度(2590MHzあたり)にしてジャンクション温度を下げたほうがよい
  • 熱が籠もるPCケースは排熱を上手くしないとGPUのクロックも伸びないし周りのパーツの温度が高くなる
  • GPUクロック高くするよりメモリクロックを少し上げた方が効果的
  • コイル鳴きが少しするので気になる
  • ファンの音はとても静か。セミファンモードもあるためアイドル時も静かに使用できる